本ページでは、年配の方向けに運動による椎骨の圧迫骨折の予防について記述します。圧迫骨折は再発しやすいと言われています。食事、薬、運動、手技療法、転ばない生活の工夫等圧迫骨折予防のためにやることはたくさんあります。特に運動は、骨密度を高め、筋力を維持し、バランスを改善するのに役立ちます。
《豆知識》
1.椎骨圧迫骨折に関する統計データ
①発症しやすい部位は、胸腰椎移行部と呼ばれる、第11胸腰~第2腰椎
・脊椎圧迫骨折は女性に多く、
50~69歳で20%
70歳代で25%
80歳代で43%
の人が脊椎圧迫骨折の所見がある。
・男性では50歳以上で12.5%の人に見られる。
②骨粗鬆症の部位別割合:
・骨粗鬆症による骨折の部位別割合については、椎骨が最も多く、次いで大腿骨近位部、橈骨遠位部、上腕骨近位部の順である。
2.骨の強さ、痛み、
・骨の強さには、骨密度のほか、骨の構造、骨の成分などのさまざまな要素が関係している。それらをまとめて「骨質」という。骨の強さは7割ほどは骨密度によって決まる。
・圧迫骨折の2/3は、痛みのないケースで、気づかないまま進行している人が少なくない。しかし、動作時、特に前かがみやひねる動作、寝返り、起き上がり時の痛みがある場合は要注意である。
・前かがみ、身長の低下(3~5cm)は重要なサインである。
(本ページの参考文献)
・宗圓聰(2019)『シニアの骨粗しょう症・圧迫骨折を防ぐ!(別冊NHKきょうの健康)』NHK出版.
・脊椎圧迫骨折とは?(2024/06/12)、閲覧日 2025/1/25、 https://www.nakada-hp.com/publicity/column/archive-57/
1. ウォーキング
ウォーキングでよく1日8,000歩という数字をよく見ます。青栁幸利先生の「中之条研究」によると「1日10,000歩歩く人は3~5年経つと膝を痛める人が多くなった。8,000歩ぐらいが適当」とあります。先生は「通勤や家事といった日常活動を含めてトータル一日の単位で「8,000歩」、そのなかに「速歩き20分」が含まれていれば健康長寿に最適。75歳以上の方の場合、5,000歩・速歩き7分半が基準」と勧めています。
※「中之条研究」:群馬県中之条町の65歳以上の全住民5,000人を対象に、日常の身体活動と病気予防の関係について2000年度から長期にわたり調査してきた研究
2. 背筋、腹筋を鍛えます。
①椅子から立ちあがる
・スクワットと同じ効果を狙います。毎回椅子に座りますので、スクワットの正しい姿勢が自然にでき、膝の故障を避けることができます。
・腕を胸の前で組みます。
・立ち上がる前に、いったん体を後ろに倒し、背中を背もたれにつけます。この姿勢から立ち上がることで腹筋を鍛えます。
・5カウントでゆっくり立ち上がります。
・8カウントでゆっくり座ります。お尻を後ろに突き出すイメージで座ります。出来るだけ、座る直前でこらえることで背筋を鍛えます。
・この一連の動作を5~10回繰り返します。
3. 胸郭や腰、股関節の柔軟性を高めます。
①同じように立つか、椅子に座った状態で、肩を後屈し肘を曲げたまま、上肢を挙上し、次に下ろします。この動作を繰り返します。肩の後屈がポイントです。頸の痛みも取ります。上肢を挙上したときは手のひらを内側に向け、下ろしたときは手のひらを外に向け、肩甲骨の可動域を広げます。これを5回行います。
②立つか、椅子に座った状態で、肘を曲げたまま上肢を挙上し、先に肘を前に出し、次に背中をそらすように上肢を後ろに回します。肘を前に出したときはできるだけ肩甲骨間を広げ、肘を横に回したときはできるだけ肩甲骨間を狭めます。肘を前に出したときは小指を手前に手背を合わせ、肘を横に回したときは手のひらを外向けにし、肩甲骨の可動域を広げます。これを5回行います。
③東京大学医学部付属病院特任教授の松平浩先生が推奨している方法です。
・足を軽く開き、膝を伸ばしたまま、手のひらを腰に当て、上体をゆっくり反らします。
・1、2回3秒間息を吐きながらキープします。
・コツは後に反らしすぎないことです。ほんの少しで結構です。
・前かがみの姿勢が続いた後有効です。
・但し、脊柱管狭窄症の人は除きます。
(本項の参考文献)
・松平浩(2016)『腰痛は「動かして」治しなさい 』講談社.
・松平浩(2016)『文藝春秋2016年11月号』文藝春秋.
・松平浩(2013)『「腰痛持ち」をやめる本』マキノ出版.
④右図「腰眼」というツボを親指で押しながら、腰を左右に15回ずつ回します。
・「腰眼」というツボを親指で押しながら、上体をゆっくり前に倒します。そして、ゆっくり戻します。10回繰り返します。前に倒すことで痛みが増す場合は、止めて下さい。
「腰眼」 (第四、第五腰椎棘突起間脊柱の傍、指4本強、腸骨の上端の高さ)
(本項の参考文献)
・孫維良(2018)『脊柱管狭窄症の痛みは指1本で消す!』宝島社.
4. バランスを改善します。
開眼(目を開けたまま)片足立ちをしながら、足上げ、太もも上げをします。骨粗鬆症や転倒による骨折防止と筋肉強化に有効です。昭和大学の阪本桂造先生によると1分間の片足立ちの負荷は53分の歩行に匹敵するそうです。
左右それぞれ1分ずつです。本ページではできるだけ片足立ちと運動を平行することを勧めていますが、ご高齢の方は片足立ちだけでも結構です。
①太もも上げ
・腸腰筋を鍛えます。
・腸腰筋は腸骨筋、大腰筋及び小腰筋から構成され、股関節を屈曲する筋肉です。小腰筋はほとんど退化しており、実質腸骨筋、大腰筋で構成しています。
・この筋肉が衰えると猫背姿勢になり、足が上がりにくく、つまずきやすくなります。
・まっすぐ立ち、太ももを前方に上げます。股関節の角度は慣れてきたら90度ぐらいです。
②足上げ
・大臀筋、中臀筋、ハムストリングを鍛えます。
・まっすぐ立ち、片足立ちのまま、もう一方の片足を前、横及び斜め後ろ(中臀筋を鍛える)、後ろ(大臀筋、ハムストリングを鍛える)に上げ、キープします。そして、最後は前後に振ります。上げる高さは踵が床から20~30cmぐらいです。なお、片足立ちをしてもふらつかないようにバランスがとれるのは中臀筋のおかげです。
・安定しない場合は壁に手をついてください。